気づけば、俺たちは中学3年になっていた。今年で、中学最後の大会になる。
っていうのに、俺は不動峰の橘に無様に負けちまった。悔しくて、悔しくて。本来ならば、後輩に頼みごとをするなんて、俺にとっては有り得ないことだ。しかし、どうしても強くなりたくて。もう1度、氷帝の正レギュラーとして戦いたくて。俺は、2年の長太郎に手伝ってもらい、今。また、正レギュラーに帰ってこれた。・・・まぁ、跡部のおかげっていうのも、少しはあるが。
とにかく、だ。次の大会じゃあ、絶対に負けられない。負ければ、それで、俺たちの夏が終わる。だから、俺もまだまだ強くならなければならないし、俺以外のレギュラー全員にも頑張ってもらいたい。とは言え、レギュラー全員のこと、それから次を担う準レギュラーのことは、部長の跡部と監督が見てくれているだろう。俺は、自分のこと、そして今ペアを組んでいる、特訓を手伝ってくれた長太郎のことを考えていくべきだろうと思っている。
で、考えた結果。
やっぱり気になるのが、長太郎のサーブだ。まぁ、入れば敵無しの最強サーブだが、お世辞にも入る確立が高いとは言えない。しかも、今日は特に調子が悪い。何かあったのか?

「おい、長太郎。」

長太郎のサーブがまたネットに掛かったとき、俺はそう呼びながら、ネットの方へ近寄った。

「は、はい、宍戸さん!」

すると、長太郎も返事をしながら、急いでネットまで駆け寄ってきた。

「お前、今日・・・。」

俺がそれだけ言うと、長太郎は自分でもわかっているらしく、下を向いた。

「そうなんです・・・。何だか、サーブが入らなくて・・・。」
「体調でも悪いのか?」
「いえ!何ともありません!むしろ、今朝は目覚めも良くて、絶好調な方です!!」
「なら、余計にヤバイじゃねぇかよ。」
「そうですよね・・・。」

絶好調とか言いながら、ガッツポーズをしていたのとは裏腹に、今度は言葉通りに『肩を落として』、落ち込む。
・・・全く、感情が全身に出るタイプだな、コイツは。まぁ、それがコイツの良い所でもあるんだが、な。

「とりあえず、部活はもう終わる。この後、まだサーブの調整したいなら、付き合うぜ。」
「本当ですか?!じゃ、お願いしますっ!!」
「おうよ。お互い様だ。」
「へへ、ありがとうございます。」

俺がそう言いながら、長太郎の肩を叩くと、長太郎はまた笑顔に戻って、礼を言った。
・・・ホント、長太郎は嘘とか吐けないタイプだよな。
あらためて、そんなことを思いながら、俺たちは部室に向かった。
そこには、既に忍足とジローがいた。・・・コイツら、ホントいつも早ぇなぁ。来んのは遅いくせに。

「おぅ、お疲れサン!何や、2人がこんな早いの珍しいなぁ、ジロー。」
「だねー。今日は、いつもより時間が短いから、もっとギリギリまでやってると思ったよー。・・・って、なんで今日は短いんだっけ??」
「あんなぁ、ジロー。明日からナイター練習も入るやろ?そやから、今日はこの後、念のための電球点検があんねや。」
「あぁ!そうだった、そうだった!!じゃ、明日からは、夜も練習できるけど、眠くなっちゃうねー。」
「ジローは、いつでも寝とるやん。」
「あはは、バレた?」

微妙に漫才をしているような2人を見て、俺も思わずツッコミを入れた。

「お前ら、ホントやる気あんのかよ?」
「満々だCー!ね、忍足!」
「そうやなぁ。・・・ま、宍戸みたいに無茶な特訓はせぇへんけどな。」
「っるせぇよ。」

忍足やジローも、何だかんだ言いながら、部活を真剣にやっているのはわかる。
まぁ、たまにサボりそうなときもあるけど、真剣にやってるからこそ、この実力なんだ、コイツらは。

「んで、そんな無茶しいの宍戸くんが、今日はなんで早かったん?」

忍足が冗談っぽく言うのを無視して、普通に「この後、近くのコートで練習すっから」と言おうとしたとき。忍足が思い出したように言った。

「あぁ、そうか!約束しとったもんなぁ。ってか、宍戸もやっぱ、男やなぁ。」

そして、最後の方は何やら、ニヤニヤしながら言い出した。
・・・何なんだよ。気持ちわりぃ。俺は、それをそのまま口に出してやった。

「・・・何なんだよ。気持ちわりぃ。」
「テレんでえぇって、宍戸。」
「は?だから、何だよ。俺は、この後、長太郎と近くのコートで、まだ練習すっから、部活を早めに上がっただけだ。な、長太郎。」
「え、あ。はい、そうです。」

突然、長太郎に振って、長太郎はやや驚きながら、そう言った。
と同時に、忍足も驚きながら言った。

「え?宍戸・・・。ホンマに俺が何のこと言うてるか、わからへんの?」
「ん?・・・あぁ。」

少し考えてみたが、と言うか、忍足がニヤニヤしながら言っていたときから、いろいろと考えてはいるが、何も思いつかなかった。

「アカン・・・。それはアカンやろ・・・。」

心底、ガッカリ・・・と言うか呆れているような忍足の姿を見て、その場にいた全員が忍足に聞いた。

「だから、何なんだよ?」「忍足ー、何の話??」「何かあったんですか?忍足先輩。」

そして、忍足の答えを聞いて、その場にいた全員が驚いた。

「自分・・・。ホンマ・・・。あのなぁ、今日は早く終わるやろ?そやから、久しぶりに一緒に帰ろうって約束しとったやないか。・・・彼女のちゃんと。」
「は?!!」「ウソー!!!」「そうだったんですか?!宍戸さん!!」
「いやいや、なんで宍戸もビックリしとんねん。・・・あ〜ぁ。ホンマ可哀相やわ、ちゃん。」

ジローと長太郎が俺をじっと見る。俺は、その間、かなり考えた。
・・・今日。教室で。と。・・・・・・。
いつも一緒に帰らないのは、俺が帰れと言ったから。・・・その。本当に暗くなるから・・・な。俺が家まで送ると言っても、俺たちの家は近いわけじゃねぇから、が怒る。それなら、俺を待たずに帰れと言ってある。
で、今日の部活が早く終わることは、昨日から知っていた。それを俺は、いちいちに言わない。言い出したのは・・・。忍足だよな・・・?
そうか!忍足が教室で、「今日は早よ帰れる〜」とか言って。で、がどうしてかを忍足に聞いて。で、いつぐらいに終わるのとか聞いてて。で、それなら待ってもいいかとか俺に聞いて。で・・・。

「あ。」
「やっと、思い出したか・・・。遅いわ。」「宍戸ー、ヒドイよー?」「宍戸さん・・・。」

完全に忘れてた。別に、のことが嫌いとかいうわけじゃない。そんなんで付き合ったりできるほど、俺はそういうのに慣れていない。
ただ、俺は部活に熱心すぎるところがあるらしい。そう、に言われた。だけど、2年から付き合っているは、「もう慣れた」とか笑って言っていた。
どうも、俺はそれに安心しきって、たまにこういう約束もマジで忘れる。・・・つまり、正直に言って、こういうのは初めてじゃない。

「ま、何とかなるだろ。」
「宍戸・・・、まさか・・・。鳳と練習行くつもりなんちゃうやろうな・・・?」
「そりゃあ、そうだろ。」

そうだ。俺たちは負けられねぇんだ。それには練習しかねぇ。には悪いが・・・、なんて考えていると、長太郎もジローもギャーギャー騒ぎ始めた。

「駄目ですよ、宍戸さん!俺なんて、どうでもいいです!!」
「どうでもいいわけはねぇだろ。」
「いえ、この際、どうだっていいんです!先に約束していた先輩の方を優先すべきです!!」
「そうだよ、宍戸!鳳なんて、どうでもEの!!」
「そうは言ってもだ、なぁ。」
「そうもこうも、ありません!俺は帰りますんで!!」
「宍戸、ヒドイってば!」
「だって、アイツなら慣れてるから・・・。」
「慣れてるって・・・。宍戸さん!余計に駄目ですよ!!今日こそは、守りましょうよ!」
「ホントだよ!あ〜ぁ、宍戸なんてサイテーだ!!サイテーだぁ!!」
「・・・もう、めんどくせぇなぁ。」

ふと別の方向を見れば、何か違和感があった。
・・・そうだ、ここにはさっきまで・・・・・・。

「おい、忍足は?」
「宍戸ー、話逸らしちゃダメだよ?」
「いや、マジで忍足がいねぇんだけど・・・。」

すると、ドアが開いて、部活を終えたレギュラー、プラス忍足とが入ってきた。

「お疲れー。・・・って、何騒いでんの、お前ら。」
「岳人ー、聞いてよー!宍戸はヒドイ奴なんだ!!・・・って、あれ?忍足??それに・・・。」
「あの・・・。忍足くん、私まで入っていいの?」
「えぇから、えぇから。」
「な、何勝手に連れてきてんだよ、忍足?!!」

本当、面倒なことになった。
跡部が、さっきの忍足みたいにニヤニヤしているのが、余計にイライラする。

「どうせ、収拾がつかへんやろなぁ、思て。んなら、俺らは着替えるし。ちゃんと鳳と宍戸は、あっちの部屋、使い。」
「俺も行くよ、宍戸!」
「だから!忍足もジローも勝手なこと、言ってんじゃねぇよ!!」
「いえ、宍戸さん。そうさせてもらいましょう!すぐに終わりますから!」
「あ、あの・・・。」

どうやら、は何の説明もされてないらしく、1人話について行けなくなっていた。

先輩、すみません。少し、こちらに。」
「え・・・。う、うん・・・。」

長太郎がそう言って、さっさとを隣の部屋へ連れて行った。
俺も仕方なく、そちらに向かった。

「ちっ。めんどくせぇ。」
「宍戸、そんなこと言っちゃダメ!!」

・・・って、ホントにジローも来んのかよ。
余りにめんどくさすぎて、そう言う気力も無く、俺はジローと部屋に入った。
部屋に入ると、長太郎が仕切って、、俺、ジローを座らせ、最後に長太郎自身が席についた。
いや、だから。長太郎も、ジローに何か言えよ。
テニスでは何も言わなくても、ほとんどわかり合えるペアのくせに、こういうときは、俺の言葉は空しくも、奴に届くことはなかった。

「・・・え〜っと、なんで私まで?」

席について、1番に口を開いたのはだった。ま、もっともだ。大体、こんなのわざわざ話し合うようなことかよ・・・。

「本当、すみません。でも、もう、ほとんど結論は出ているようなものなので、すぐに終わります!実は、ですね――。」

そう言う長太郎に、は少し戸惑いながらも、長太郎やジローの話をちゃんと聞いていた。
そして、話が進むにつれ、はそういうことか、という表情になっていった。

「――そういうわけで、結論は2人で帰りなさいってことなの!」

いや、それはお前らだけの意見だろ。俺の意見が何も入ってねぇよ。
ちなみに、の答えも、俺はたぶんわかっている。そう、やっぱり『慣れ』なんだ。

「ありがとう。でも、私もこっちの意見に賛成。」

は手を俺の方へ向け、そう言った。・・・ほらな。

「ど、どうしてですか?!!俺のことなら、心配しなくても・・・!!」

長太郎が驚いて、立ち上がり、大声でそう言った。
ホントに、感情を全身で表す奴だなぁ、なんて俺は呑気に思っていた。
たぶん、この話は俺が入るよりも、に任せた方が早く終わると思う。だから、俺は何も言わず、ただ様子を見ているだけだった。

「鳳くんのことだけを考えてるんじゃないよ。私は、氷帝のテニス部に勝ってほしいの。だから、今日の練習が短くて足りないと思ってるなら、存分にしてきて。あの時、練習しなかったから負けた、なんてことにはならないでほしいのよ。・・・もう2度とね。」

は、俺の方をチラッと見た。・・・るせぇよ。わかってんだよ、そんなことは。

「あ、だからと言って、無茶はしないでよね?鳳くん。」

俺の方を見たままで、はそう言った。・・・だから、わかってるっての。

「それは、そうですけど・・・。」
「ホントにEの??」
「うん、いいの。別に一緒に帰るなんて、この先だって何回かあるだろうし。でも、練習時間は限られてるんだからね。」

本当に全然気にしてないよ、とか。むしろ、練習の邪魔してまで、一緒に帰る方が嫌だ、とか。その後、が話の主導権を握り、結局俺たちは練習することになった。
しかし、1人で帰らせるのは、やっぱり長太郎の気が引けるということで、は、その場にいたジローと、同じクラスでもある忍足と3人で帰ることになった。

「よし、これで終わり。・・・・・・って、みんな着替えてるんだよね?・・・私、出てもいいのかな?」

は笑いながら、そう言った。
長太郎はそれを見て、本当に気にしてないんだなと感じているようだった。

「俺、見てくるー!で、急いで、忍足に話してくるね!」
「うん、ありがとう。」

そのときも、ずっと笑顔のまま、は言った。
そして、俺は久しぶりに口を開いた。

「じゃ、俺らも、行く準備するぞ。」
「あ、はい!宍戸さん。」

長太郎もいつものように、返事をした。
コイツもわかったようだな。
しかし、何故かが俺たちを止めた。

「あ、ちょっと待って。私が出てもいいってなるまで、2人で待たせてくれない?これなら、一緒に帰るのと同じように時間共有できるし。これで鳳くんも、気にせず、この後の練習に集中できるでしょ?」
「・・・そうですね!そうしてください!先輩方には、ゆっくり着替えるように言って来ます!!」
「ハハ、いいよ。いつもの速さで。」

の声が聞こえたのかどうか、わからないぐらい、急いで長太郎は部屋を出た。
さっきまで、長太郎も気にしないようになってたのに。余計なことを。
そう思いながら、俺はの方を見た。すると、さっきまでの笑顔が無くなっていた。

「あのね・・・。私が本当に何も気にしてないと思ってる?」

・・・ヤバイ。流石に怒ったのか?でも、もう慣れたって言ってくれたよな?
だけど、正直、その言葉に頼りすぎている俺がいるのは自覚している。そのおかげで、本当にを放置している。よくも、こんなんで今まで続けてくれているな、とも思っている。
だけど、やっぱり俺はテニスも捨てられねぇ。でも、のことも嫌いじゃない。・・・と言うか、その・・・ちゃんと、好きだ。どっちが大事とか、そんなのどっちもに決まってる。
ただ、今は大会が近いとか、今年で最後とか、この間負けたことが悔しいとかで、テニスに偏っちまっていることはわかっている。それでも・・・。

「な〜んて。あんまり、難しい顔しないでくれる?こっちまで、深刻になりそうなんだけど?」

すっかり自分の世界に入っていた俺は、がまた笑顔に戻ったことに、今気づいた。

「全く気にしてないっていうのは、嘘になるけど・・・。前も言ったように、もう慣れたから大丈夫。」
「でも、俺。本当にに何もしてなくねぇか?」
「何言ってんの。そんなの今更。私は、亮とイチャイチャできるとは思ってなかったよ、最初から。と言うか、そんなの亮じゃないし、気持ち悪い。ただ、たまに一緒に過ごせて。それは私が誰よりも特別だから、そうしてくれるんだってわかって。その特別っていうのが、テニスと並べるくらいの位置なら、それだけで幸せだよ?」

そう言うは、本当に嬉しそうだった。
・・・よくも、そんなこと、少しも恥ずかしがらずに言えるよなぁ。

「その代わり。ちゃんと、大会で勝ってきてよね。」
「わーってるよ。・・・ったく。・・・・・・・・・ありがとよ。」
「いいえ。」

本当に、は笑顔が似合う・・・・・・とか、なんか忍足みてぇなことを思っちまった自分が気持ち悪くて、すぐに考えを取り払おうと、何度か顔を振った。

「りょ・・・・・・、ねぇ。まだ出れないのかな?」
「ん?そうだな・・・。ちょっと見てくるわ。」

幸い、はドアの方を気にしていたらしく、俺のやや焦った行動には気づいていなかった。
俺も何事も無かったかのように、席を立ち、ドアの方へ向かった。
・・・・・・今、ドアが動いたような気がしたが・・・、気のせいか。

「おい、・・・って、あぶね。」

ドアを開け、「おい、お前ら。もういいか」と言おうとしたが、ドアの前に忍足やジローがいて、ぶつかりそうになった。

「あぁ、宍戸。今、みんな着替え終わってん。んで、言いに行こうとしててんなぁ、ジロー。」
「そうそう!ちょうどすぎて、ぶつかりそうだったねー、宍戸。」
「そうか。・・・・・・いいってよ。」
「はい、ありがとう。」

少しの方を見て、それだけ言うと、俺も帰る準備をし始めた。
は、話していたとおり、ジローや忍足に一緒に帰ってくれるよう、頼んでいた。

「じゃあね、2人とも。練習、頑張ってね。」
「はい、ありがとうございます!」

そして、は俺と長太郎にそれだけ言って、3人は帰った。

「ほな、お疲れ〜。」「また明日〜☆」「失礼しました。」

部室には、まだ跡部とかが残っていて、チラチラこちらを見てくる。
・・・だから、めんどくせぇなぁ。
そう思って、俺はさっさと出ようと長太郎を引っ張った。

「行くぞ。」
「あ、はい。では、お先に失礼します。今日はお疲れ様でした。」

長太郎は、相変わらず、礼儀正しく部室を出た。
それから、コートに行くまで、一切の話など出てこなかったし、サーブの練習もかなり順調にできた。やっぱり、長太郎はいいペアだ。

「よし、ここまでにすっか。」
「はい、ありがとうございました!」
「どっかで、何か食ってくか?」
「いいですね!そうしましょう。」

俺も機嫌よく、そう誘った。・・・が、それがミスだった。
練習が終わった途端、長太郎はやたらと質問攻めをしてきた。

「宍戸さん。先輩って、いい人ですね。」
「・・・まぁな。」
「そこが好きなんですか?」
「は?なんで、そんなことを答えなきゃなんねぇんだよ。」

あ〜ぁ、調子に乗って、誘うんじゃなかった。
俺の隣を歩く長太郎は、やたらニコニコしていて、正直気味が悪い。・・・まぁ、忍足や跡部と違って、イライラはあまりしないが。

「先輩方って、お互い何て呼んでるんですか?」
「そんなの、見てりゃわかるだろーが。」
「いえ、わからなかったですよ。宍戸さんは、あの話し合い中、何も言わなかったし。先輩も、宍戸さんのこと、1度も呼んでなかったっすよ。」

・・・・・・そうだったのか。・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・もしかして。
アイツ、俺が周りにからかわれるのことが嫌いだからって、気にしてくれてたのか?

「忍足さんやジローさんも、聞きたがって、盗み聞きしようとしてたみたいですけど、すぐに宍戸さんが出てきちゃったので、焦ってましたよ。・・・って、これ言っちゃ駄目ですよね。ってことで、内緒にしておいてください。」

・・・そういえば、俺があの部屋を出ようとしたのは、が言ったから。そこまで、考えて・・・?
しかも、同じクラスの忍足まで知らないって言うのは・・・。かなり意識して喋ってるってことか?
そう思うと、俺はすぐにに確認したくなった。

「悪ぃ、長太郎。俺、やっぱ帰るわ。」
「え?え?す、すいません。俺、何か余計なこと言いました・・・よね?」

突然、俺がそう言い出したことに、長太郎はかなり焦って謝った。
それが可笑しくて、俺は少し笑ってから言った。

「いや、そうじゃねぇって。ちょっと、用事思い出しただけだ。ホント、悪いな、長太郎。」
「いえ、それならいいんですけど・・・。それにしても、用事って・・・?」
「ちょっと、確認したいことができただけだ。」
「確認・・・??」
「まぁな。とりあえず、お疲れ。今日、行けなかった分は、今度の奢りで許してくれ。じゃあな、気ぃつけて帰れよ。」
「は、はい。また明日。」
「おぅ、また明日な!」

そう言って、俺はダッシュで家に帰った。そして、即行でに電話した。

『・・・亮?』
「おぅ。今日は悪かったな。」
『だから、いいって。ってか、珍しいね。亮がそんなことで電話って。』

・・・それって、失礼じゃねぇか?とか思ったが、言われても仕方がないほど、俺は何もしていないし、今はそんなことより、早く確認したくて、何も言わなかった。

。」
『ん?』
「お前、周りに誰かいるとき、俺の名前を言わないよう、意識して喋ってんのか?」
『・・・・・・なんで?』
「なんか、長太郎と話してて、ふと思った。」
『鳳くんが何て?』
「俺らがお互い、何て呼んでるかがわからないって言ってた。」
『それで、気づいたの?』
「いや、気づいたつーか・・・、なんとなく。」

大した理由も、証拠も、考えも無く。俺は、もしかして、そうじゃないかと妙に強く思った。だから、早く確認したかった。本当に、それだけだ。

『まぁ、一応はね。意識してるよ。』

ほら、当たった。・・・って、今はそんなことを言ってる場合じゃない。

「それ・・・疲れねぇ?」
『ん〜、どうだろ。これも慣れたかも。』

また嬉しそうに、は言った。

「・・・なぁ。俺は何もしてねぇのに、なんではそこまでしてくれんだよ。」

情けない。俺が何もしていないのは自業自得で。それなのに、不安みたいなものを感じて。しかも、それを口に出してしまった。・・・俺、どうかしたのか?

『別に、亮のためってわけじゃないんだけど・・・。そうした方が私もとやかく言われずに済むし。それに、亮は何もしてないことないよ。亮を待ってたら暗くなっちゃうからって、早く帰れって心配してくれるし。あと、亮がテニスをしているのを見ると、こっちも何か頑張ろうって思うし、元気も出てくる。だから、亮はそれでいいの。』

その言葉は・・・いや、の言葉は、いつも俺を勇気付けてくれる。本当にありがたく思うし、やっぱり悪いとも思った。だから、俺は1つ決心をした。

「わかった。今は、部活に集中する。・・・けど、大会が終わったらよ。その・・・。・・・・・・・・・。・・・の行きたい所とか、連れて行ってやる。」

1つじゃなかったな。俺は、2つ決心したんだ。
1つ目は大会後はテニスよりも優先することを、2つ目はと呼ぶことを。

『・・・・・・うん。ありがとう。楽しみにしてるね。』

・・・、じゃなかった。は、少し驚いているようだったが、やっぱり嬉しそうに、そう言ってくれた。

『だけど、大会は早く終わらないでね。』
「・・・それ、雰囲気ぶち壊しだろ。」
『でも、それって大事でしょ?』
「そうだけどよ・・・。」

俺のトーンが少し下がると、は笑っていた。
・・・俺、には敵わねぇなぁ。ホント激ダサだぜ・・・。
そんなことを、ふと思っていると、が突然、あ!と何かを思い出した。

『そうだ!もう、ご飯とか食べたの?』
「いや。さっき帰ったとこだけど。」
『やっぱり!!そんなことだろうと思った!今日、亮の言いたいことは、すごくわかったし、すごく嬉しかったよ。だから、ありがとうね。はい、電話切るよっ。今日も練習頑張ったんだから、早く寝なきゃ駄目だからね!』
「それぐらい、言われなくても・・・。」
『いや、亮は無茶するから。んじゃ、また明日ね!バイバイ!』
「お、おぅ。明日な。」

かなり焦って、がそう言ったから、俺も電話を切った。
・・・なんだかな。やっぱ、俺がしてもらってばっかだよな。とかちょっと感動したり、反省したり。
そんなことを思ったが、約束したんだ。今は部活を優先してもいいんだ。それが終われば、を優先すればいい。
そうと決まれば、明日も特訓だ!・・・と言うか、明日からはナイター練習も入るんだったよな。気合入れていかなきゃな!で、ちゃんと、大会で勝ち試合をに見せてやらなきゃな。そのために、今は部活優先なんだからよ。
・・・これって、結局、優先なんじゃねぇのか・・・・・・?なんてことを思ったのは、もちろん、誰にも秘密だ。













 

このテーマは、B型男を書いてみよう!でした(笑)。知り合いの彼氏がB型で、よく困ったという話を聞くので・・・。
もちろん、血液型だけで人を判断してはいけませんがね!

ちなみに、このタイトルはgetという単語が「感動させる」と意味があるらしく、完璧な彼女に感動する=be got(受動態)としてみました!
本当、彼女さんは疲れるでしょうねぇ。書いている本人は、楽しかったんですが(笑)。
・・・・・・すみません。さっきのタイトルの説明は、後付です;;
実はただのダジャレです。テーマがB型なので・・・
be got → B ゴット → B ガッタ → B型 ・・・という感じでムリヤリ(笑)。